設立経過
紀伊半島の西側、和歌山県の南部に位置する「田辺市」は、平成17年5月1日、5市町村が合併し、人口約8万人、面積1,026㎢と県全体の約22%を占める近畿地方で最も広い市域を有する新市として誕生しました。
そして、その広い市域には、美しい海・山・川の自然をはじめ、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」として登録された「熊野古道」や「熊野本宮大社」に代表される古い歴史や文化、日本三美人の湯として知られる「龍神温泉」や日本最古の湯(蘇りの湯)ともいわれる「湯の峰温泉」などの温泉郷、さらには、温暖な気候と風土に育まれた「特産品」など、人々の心と身体を癒す豊かで魅力的な地域資源・観光素材が数多く存在しています。
そして、これらの多彩で世界にも通用する様々な資源や素材を活用し、田辺市の総合的な観光をプロモーションするため、田辺市内5つの観光協会が構成団体となり設立されたのが「田辺市熊野ツーリズムビューロー(以下、ビューロー)」です。
受入環境整備
ビューローは設立以後、広域的・世界的な視野に立ち、質の高い地域・観光情報の発信と、受入地としてのレベルアップを主な業務として、行政や観光協会、民間事業者とも協働し、ソフト・ハード事業に取り組んでまいりました。
具体的には、ホームページやパンフレットなどの多言語化。また、国内外のプレスツアーやエージェントファムの誘致、さらには、材質や色、標記 がバラバラであった「熊野古道案内看板」の統一事業を手掛けるなど、「世界標準の観光地」を目指し各種事業を実施してきました。また、ハード整備と同じく、受入地としてのホスピタリティ(おもてなしの精神)の向上もお客さまを迎える上で大切な要素です。そこで、私たちは、日本人はもとより外国人旅行者を視野に入れ「笑顔があれば英語が話せなくても大丈夫!日英併記のツールでコミニュケーション」 をテーマに、業種別にカリキュラムを設け、きめ細かな受入地としてのレベルアップ研修を行いました。
そしてその結果、まだまだ完璧とは言えませんが、受入側である宿やホテル、交通事業者はもちろん、お客様もストレスなく旅行を楽しんでいただけるようなハード・ソフト両面での環境が整いつつあります。
着地型観光(旅行会社)の設立とビューローの役割
旅行形態は、近年、欧米諸国はもとより日本においても「ツアー(団体旅行)」から「個人旅行」へと変化してきています。そして、それに伴い旅行客のニーズが多様化・個性化され、いわゆる「本物志向」が強まり、発地の情報だけでは対応が困難となって、着地(地元)での現地情報やネットワークを活かしたきめ細かなサポートが求められるようになってきました。
そのような時代背景の中、こうした変化に対応し、誘客に結び付けるためにはどうすればよいか。そう考えたとき、今までの「情報発信」や「受入地のレベルアップ」だけでは十分ではない。数多くある観光資源を繋ぎ、実際に旅行商品として販売するとともに、お客様を現地まで運んでくる仕組みづくりが必要だとの結論に至りました。そして、こうして生まれたのが「着地型観光(旅行)」という概念です。
ビューローでは、地元ならではの情報やネットワークを駆使し、「語り部」や「みかん狩り」、「風鈴づくり」などの体験プラン、また、「道普請(熊野古道の補修ボランティア)」や「間伐作業」など、従来では商品としてなり得なかったような素材と旅行とを結び付けることで、地元ならではの新たなオリジナルツアーを開発してきました。
そして、これらのいわゆる「着地型観光(旅行)」を通して、お客様と地元事業者を繋ぐ「中間支援組織(プラットフォーム)」としての役割を担っています。
今後の課題(観光資源のブラッシュアップと地域資源の掘り起こし)
先にも述べたとおり、田辺市は「世界遺産」という素晴らしいブランド力を持つ観光資源を有しています。
今後は、「保全」と「活用」のバランスを保ちながら、やはりこの「世界遺産」を核として、従来から存在する観光資源をブラッシュアップするとともに、「ヘルスツーリズム」や「エコ・グリーンツーリズム」など魅力ある旅行商品の開発、さらには「食」や「歴史」「文化・芸術」といった新たな地域素材の発掘にも注力し、100年先、1000年先を見据えた「世界に開かれた質の高い持続可能な観光地」を目指して取組を進めていこうと考えています。