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世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」

 「紀伊山地」は紀伊半島の大部分を占める山岳地帯で、標高1,000~2,000m級の山脈が走る日本有数の多雨地帯で、豊かな雨水が深い森林を育んでいます。
 紀伊山地は、神話の時代から神々が鎮まる特別な地域と考えられており、仏教も深い森林に覆われたこれらの山々を阿弥陀仏や観音菩薩の「浄土」に見立て、超自然的な能力を習得するための修行の場としました。

 その結果、紀伊山地には三つの霊場「熊野三山」「高野山」「吉野・大峯」が生まれました。
 三霊場は、古代以来、自然崇拝に根ざした神道、中国から伝来し我が国で独自の展開を見せた仏教、その両者が結びついた修験道など、多様な信仰の形態を育んだ神仏の霊場であり、そこに至る「熊野参詣道」「高野山参詣道」「大峯奥駈道」などの参詣道は都をはじめ各地から多くの人々の訪れる所となり、日本の宗教・文化の発展と交流に大きな影響を及ぼしました。

 『紀伊山地の霊場と参詣道』は、三重、奈良、和歌山の三県にまたがる「紀伊山地の自然」がなければ成立しなかった「霊場」と「参詣道」及びそれらを取り巻く「文化的景観」が主役であり、日本で唯一、世界でも類を見ない資産として高い価値を持っています。

文化的景観

「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録でキーワードとなったのが「文化的景観」です。その意味するところは「自然と人間の営みによって形成された景観」というもので、幅広い内容を含んでいます。
 山や樹木なども、「霊山」や「神木」として特別な価値が与えられると、「文化的景観」に仲間入りすることになります。

 紀伊山地の霊場もその一例で、古くから神々が宿る所として崇拝されてきた山々が、新しく渡来した仏教の影響のもと、宇宙や自然の中にひそむ神秘的な力を身につけるために山岳修行の場となったものです。同様に参詣道も、そこを徒歩で進み自然との接触を重ねること自体が、すでに修行でした。

 つまり「紀伊山地の霊場と参詣道」は、単なる社寺と道ではなく、あくまで「山岳信仰の霊場と山岳修行道」なのです。

これらの「文化的景観」を守っていくためには、単に神社や仏閣など文化財としてしていされているものを保存すればよいというのではなく、基盤となっている自然や人間の手によって何代にもわたって引き継がれてきたものも含めた「周辺景観」も良好な状態で維持する必要があります。


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